「やせ」女性の割合の増加
成人すると、男性は約3割が肥満で太り過ぎが問題になるのに対し、女性は痩せ志向が顕著です。
2019年の厚労省の国民・健康・栄養調査によると、体格の指標となるBMIが18.5未満の「やせ」の割合は20歳代女性では21%でした。
1981年の13%から長期的に増加傾向を示しています。
他のOECD諸国の3〜4倍です。
BMI・・・肥満度を表す指標として国際的に用いられる体格指数
体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った値
- 18、5未満が「やせ」
- 18.、5〜25未満が「普通」
- 25以上が肥満
若年女性の「やせすぎ」深刻
日本の若い女性のやせすぎが、深刻な健康課題になっています。
20歳代女性の5人に1人が「やせ」で先進国の中でも割合が高いのです。
小学校4年生から高校生の男女300人に行った調査では、約4割が今の自分は太り過ぎか太り気味と答えたそうです。
約半数が痩せたいとしてダイエットに取り組んでいるそうです。
骨量減少、出産リスクも
若い女性の「やせ」は生涯に渡り、健康に大きな影響を与えます。
栄養不足になると、骨量の低下や貧血、月経不順などを招きます。
タンパク質の摂取が十分でないと、筋肉量も少なくなりがちです。
加齢でカルシウムの吸収量が落ちるなどし、骨量は20歳代をピークに下がります。
若年期の栄養不足は中高年期の骨粗鬆症につながり、要介護や寝たきりのリスクを高めます。
やせの女性の7割が食習慣を見直す意思がなく、痩せているほど美しいとの偏った価値観にとらわれて、健康問題と認識できない人が多いのではないでしょうか。
妊娠・出産と「やせ」の課題
- やせすぎ(脂肪の少なすぎ)は「排卵」減少⇨無月経・不妊
- 「やせ妊婦」は切迫早産になりやすい⇨早い週数で産まれてしまう可能性(未熟児)
- 「やせ妊婦」は赤ちゃんが大きくなりにくい(出産時体重2500g未満)
- 出生児体重2500g未満の赤ちゃん=低出生体重児
- やせの女性は低出生体重児を出産するリスクが標準体重の人の1、5倍
低出生体重児は将来、糖尿病、心臓病、高血圧などメタボリックシンドロームになりやすい⇨胎内で低栄養状態で育つと、脂肪などを蓄えやすい体質になるためとされる
国内ではこの10年、低出生体重児が生まれる割合が約1割と高い水準で推移しています。
未来の日本のために
妊娠すると、胎児や胎盤、羊水に加え、胎児を守るための皮下脂肪や血液量が増えるなど、普通10キロ程度の増加は当然です。
しかし、痩せ志向が強い女性は、妊娠しても体重増に抵抗がある事も多いようです。
妊娠中に適切に体重を増やすには、栄養バランスの取れた食習慣を身につけることが大切です。
ただ、妊娠してから急に食習慣は変えられません。
思春期から正しい認識を持ち、食生活を整える必要があります。
「やせ」の問題は、自身が中高年になった時の健康や次世代の健康にまで影響する「未来のリスク」と言えるでしょう。
重要なのは家族の影響
食生活に影響を与える情報源は家族です。
思春期のお子様を持つお母様にはタンパク質、カルシウムをとることの大切さを家庭で伝えてほしいと思います。
私も骨粗鬆症マネージャーとして、骨粗鬆症の治療を啓蒙したり、骨密度測定を進めておりますが、お嬢様を持つお母様方には食育の大切さも伝えています。
骨量は20歳代にピークを迎えるので、それまでにしっかりした骨を作っておくことが重要なのです。
骨粗鬆症は女性の宿命です。
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